光景ワレズANNEX

赤いソファを知ってるか 青いソファを知ってるか

大学時代から15年後の今、男5人で旅行に行った記録(前編)

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関越自動車道に乗って、練馬ICからはまだまだ出発したばかり、といった微妙な距離にある上里サービスエリア。朝食代わりのご当地グルメ「上州焼きそば」を食べてみる一行。

 

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「うーん、普通」「上州感を探してるが見つからない」ちょっと笑いながら結局美味しくペロリと平らげる。今日の新潟方面は順調に車が流れている。越後湯沢には予定より早く到着してしまいそうだ。

 


背景

……ささやかな家庭を築いて数年、二人の子供に恵まれた。毎日それなりに暮らし、子供の成長が生活のハリと楽しみの主たるものである。
しかし、今を否定するつもりは微塵も無いが、しかし昔の暮らしが輝いて見える感情にも嘘はつけない。そういうこともある。
たまには昔のように、友人たちと下らない旅行がしたい。そういうのが「憧れ」に変わっている。

そんなとき、たまたま大学時代に入っていたサークルの後輩、藤田からLINEで連絡があった。
「赤祖父さん、遠山さんの店見に行きませんか。久々に中田さんも来るそうなんで」
藤田は大学時代の2つ後輩にあたり、たまに連絡が来る間柄で、2年に1回くらい飲んだりする。顔は西鉄バスジャックの犯人に似ていて、しかも人格が破綻しているせいで女っ気は皆無で35を過ぎた。


遠山というのは大学のサークルでは私の先輩にあたる人で、40歳過ぎてガチの童貞を貫く男である。昔は30歳で童貞であれば魔法使いになれると言っていたが、今は魔力の受給年齢が引き上げられたせいで40歳過ぎても大魔道士どころかその魔法使いすらにもなれず、新潟・南魚沼で父親の退職金を元手に開業したお店の店長をしている。その人間性から後輩からもイジられがちな人間である。

 

関西の友人中田は大学の同期で、以前都内の大手人材派遣で働いていた。短時間睡眠と何回も射精できる特技を持っていて、本来ならば汁男優が天職の男だ。少し前までは週6日労働し、更に夜はナンパとセックスに精を出す典型的な性欲が原動力のワーカホリックだったが、身体を壊して地元に帰った。今は東京でのキャリアを活かし関西に支店のある同じ業種で復帰したらしい。その彼が東京に遊びに来るついでに、久しく会っていなかった遠山さんの様子を見に行こう、というのが旅の趣旨である。

 

まったくもって下らない旅の目的だが、旅の目的とはあくまで折り返し地点の設定程度であってあまり意味は無く、むしろ過程が大事なのである。


もちろんこの誘いには大いに乗りたいところだが、前述の通り今の我が家には小さい子がいるのでなかなか厳しい(離乳食が終わると世話が一段階ラクになるが)。
しかし幸い、この大学時代の繋がりは妻もそのサークルのメンバーのひとりでもあったこともあり、よく知っている仲である。妻も遠山さんの現況がわかるなら行ってくるべきと賛同してくれた。

 

大学時代の繋がりは強固なようで儚く、特に男女関係が入ってくるとグチャグチャになる。私の居たサークルもおおよその大学生のそれと同様で、途中で辞めたりケンカしたりでメンバーが変遷していったものの、最終的に自分の知る上下4年プラスアルファを中心にそこそこの繋がりはある。ただ実際のところはそれぞれの事情があるし、そこまで親密に連絡を取るわけでもないので集まりにくい。今回は色々な良いタイミングが重なって、数年の状況が不明な遠山先輩の店を見に行くためだけに、私を含めた5人で新潟まで一泊して行こうという話でまとまった。


テッパンの観光地を見るわけでもない、美味いものを食べに行くでもない、誰にも羨ましがられない旅。旅程も目的もグダグダな意義の無い旅。こんな贅沢な時間の使い方は久々で、私はワクワクしながらその日を待ち過ごした。泊まる宿も旅程もよく知らされていない。グループLINEは入ったが、個人個人のLINEは友だち登録しない。それくらいの繋がりでいいのだ。


移動

当日の朝、集合の駅に電車で行くと藤田が来ていた。続けて近くのホテルに泊まっていた中田もほぼ定刻に来る。流石に社会人経験も10年をゆうに超え皆30代後半~40代前半ともなると遅刻は基本的にしないもので、大学時代はこのメンツで集まっても集合時間プラマイ30分のズレが当たり前だったので新鮮である。そして今回車を出す後輩、木佐がその少し後に車で到着、皆をサッと拾って早速高速道路の入り口に向かい、その途中でガソリンスタンドに寄った。

 

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自分にとってはまず「ガソリンスタンドの待合室」そのものが懐かしく、新鮮で楽しい。単調な日常を打破するスパイスはこんな近所にもあったのだった。


ところで「この歳だと遅刻はしない」と書いたが、もうひとり来るはずだった後輩の大川は、前日の飲み会(私以外の今日のメンツと、別のメンバーたちでやっていた)の二日酔いを理由に新幹線で遅れて追いかける、と言っていた。二日酔い程度の理由でサラッと相乗りの車から新幹線に切り替える、こんな金の使い方ができるのもまた大学時代と全然違うところだ。

 

金と言えば木佐の車は外車で、運転支援だの渋滞時に付いていくシステムだの先進的な機能が沢山付いていて、聞けば500万ほどもするらしい。でも青いボディのことを車の長ったらしい色名をパロって「オタクティックブルー」などと皆で小馬鹿にしたりする。そういう信頼関係がある仲での会話は、とてもラクだと改めて実感する。例えばTwitterで「この車買いました!バーン」と自慢する人に同じことを言ったらまず怒られる。そのほか、話す内容は具体的に書けない(下劣とか差別的というのではなく、思い出せないという意味で)ほど中身の無いこと、多少は社会人経験を活かした下らない社会派ギャグが入る程度で、後は15年前の大学のサークル室での会話と程度の差が無かった。学生時代の繋がりとは、私はそういうものだと思う。私が得意なインターネットの話に関しては、彼らは見る専で、Twitterでこんなのが…とか、はてブが沢山付いていたアレが…みたいな話はほぼ通じないので一切しなかった。ネットの人に会ったらはてブ500付いた話題の話なんかは大体通じるものだが、そういう価値観から一切離れてみるのも良い。

 

 

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高速に入った後1、2時間で冒頭のとおり上里サービスエリアに寄ってもらった。サービスエリアも久々で楽しかったが、でも結局、最近のサービスエリアは凄いなあ!と言いたいだけなのだ。別にこれといって欲しいものは無いのだった。

 


温泉

越後湯沢で大川と待ち合わせるのだが、かなり早く到着したので温泉に行こうということになった。ガーラ湯沢と越後湯沢の間に「山の湯」という立ち寄り湯の施設がある。

 

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車で来るとちょっとその傾斜にビビるほどの道を登ることになるので、ショボい車だったら下のほうの駐車場を探したほうがいい。

 

 

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ここは源泉掛け流し加水なしの温泉ガチ勢にも割と認められる湯で、私も久しぶりにカルキ臭のしない新鮮かつ濃厚な湯を堪能できた。

 

 

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正直、「湯沢の温泉なんて……」と少々ナメていた節が私にはあった。でも考えを改めさせられた。ここのお湯は素晴らしかった。割とあちこちの温泉を回った自負はあるが、だからこそ箱根や鬼怒川、熱海、そしてこういう湯沢のようなメジャーな温泉地を歓楽温泉とナメがちなのは悪い癖である。反省。

 

しかし大学時代からの友人たちもすっかり中年なので、皆腹が余裕で出ているし、出ていることをなんら疑問にも思わないのは、私もまた小太り中年であるのでとても精神的に楽だった。これは女性にも言えるが、むしろテレビに出ているようなすぐ脱ぎたがる引き締まったアイドルこそ不自然、異常な姿なのである。

 

 

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店主のシャツが面白すぎたので思わず「それどこで買ったんですか」と聞いた。店主いわく「縫ってもらった」らしい。じゃあその反物どこで買ったんですかとは食い下がれなかった。

 

 

越後湯沢駅

その後越後湯沢駅で、遅れてきた大川と合流した。

 

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越後湯沢駅もかなり久々に来たが、駅自体が大分エンタメ特化していて楽しい。

 

 

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私は酒が飲めないのでこの全てを楽しめないのが残念だが、飲める人と同行しているとそれも雰囲気的にクリアできるのが嬉しい。早速藤田も運転手への気遣いゼロで即利き酒コーナーに突撃していた。

 

 

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本当は飲めない私が運転すれば良いのだが、高い車を運転して何かあると気が引けるし、木佐も運転が好きなので別にいいらしい。このあと藤田はすぐ寝た。

 

 

昼食

 

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越後湯沢から小一時間ほど、目的地の遠山さんが暮らす付近にはそばの名店があるようで、並びも覚悟する必要があるらしい。もし普段の私だったら絶対に、絶対に行かない。でも、こういう流れ、こういうメンツであれば並びもまた良いか、と思えるのだ。

 

 

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実際は1組だけ待ってほぼスンナリと入れた。

そしてここで、旅の目的こと遠山と合流した。HUNTER×HUNTERで言えばもうジン(主人公ゴンの親)に会ってしまった感じだ。しかし、オジサンたちの再開、数年ぶりであっても大袈裟な懐かしい~~とか久しぶり~~とかは、無い。「おっす」「どもっす」といった程度である。中年とはそういうものなのだ。昨日会ったような素振りで数年来の再開をし、明日も会うような素振りで別れ二度と会わなかったりする。中年とは、そして友人とはそういうものなのだと思う。

 

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ここのそばは確かに美味しかった。が、そばである。美味しいが、脳天ガツンとやられるほど美味しいわけではない。しかし大学時代は頼りない、情けない、童貞、などのキャラで通っていた遠山さん、ここでは店をやっている影響なのか、やたらと地元の人に顔が利く。この名店のそば屋の店員とも知り合いで、こっそり卵焼きをサービスしてくれた。都会でパッとしない暮らしであった人も、住む場所を変えたら案外水を得た魚のように変わったりもするのかもしれない。とはいえ本質は相変わらず変わらないので、相変わらずの15年前の延長みたいな下らない雑談が続くのだった。

 

 

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(長くなるのでいつになるかわからないけど続きます)