最近全然お出かけをしていなかったので、有給を使って前々から行きたかった駅に行ってきた。
日帰りとはいえ頑張れば結構遠くまで行ける。しかし子供の保育園送迎を前提として行って帰ってこれる範囲だとそんなに無茶はできない。なので近所で宿題だったこの駅のことを思い出したのだ。
関東の人が海外旅行に行くときは、成田空港を利用する場合が殆どだと思う。鉄道でもバスでも、空港第2ビル駅と成田空港駅というのがあって、自分の乗る便はどちらから出るのだろう、と気にするくらいが普通だと思う。
でも、実は「3つめの成田空港の鉄道駅」がある。それが多くの人から忘れ去られた存在の【東成田駅】だ。
このようにしっかり路線図にも乗っているし、乗り換え検索もできる。ちゃんと列車は発着している「生きている駅」である。
鉄道趣味学部 駅学科 秘境駅専攻の自分としては、是非訪れておきたい駅である。
※鉄道趣味は専門が細分化するのでひとくくりにできない面もあるのです
訪問にはせっかくなので京成スカイライナーに。普段海外に行くときは成田エクスプレス一択なので(中央線沿線住まいだとどうしてもそうなるのです)新鮮な気分だ。びっくりするほどあっという間に到着。
※ちなみにこのスカイライナー(2代目京成AE形)の営業最高速度は160km/hでマジで新幹線以外の在来線では一番速い。*1
空港第2ビル駅で下車し、改札を出て空港入り口の検問っぽいエリアとの間に、RPGの隠し通路のようにこんな道がある。多分何度も何度もここの前を通っていても、存在に気付いていない人も沢山いると思う。写ってないけど横に警備員がいて、パッと見では入っちゃダメみたいな雰囲気があるが、当然誰が通っても良い連絡通路なので、堂々と通る。
はい。これはすごい。向こう側が見えない。
500mほどこの誰もいない殺風景な通路を歩く。空港の喧噪がまるで聞こえず、一人でコツコツと足音を鳴らしながら「かつて高度文明を誇った廃墟都市からの脱出」みたいな妄想にふけるのにたいへんオススメである。
たまにこんなポスターも貼ってある。フォントといいコピーといい90年代前半のセンスだろうか。
ちなみにauはずっと圏外だった。最近は都内の地下鉄もエリア化してるくらいだから逆に圏外が珍しく感じた。
そして通路を歩ききるとこんな風景になる。ここが東成田駅だ。構内の冷房は効いておらず、モワッとしている。駅員は常駐しているが客はいないので当然といえば当然だ。
構内はこんな感じ。ムダに広い感じが、どことなく旧共産圏の鉄道駅のような雰囲気を感じさせなくもない。奥に見える後付けの壁は、無駄な広さを制限するために設けたようだ。引っ越して部屋が広すぎると落ち着かない、というアレだ。多分。
後述するが、かつてはここが正式な「成田空港駅」だったという。なのでかつては大勢の利用者で賑わっていたのだろうし、これくらいの空間が必要だったのだということを感じる。
取り敢えず駅の外観を見てみようと思ったが、当然のようにエコ運用。殆どいない客のために動かすわけがない。運転を中止しているのは只今ではなくここ20年の間違いではないか。
「混雑時の行列は検問所からまっすぐにお並び下さい」とのこと。
混雑していたときもあり、また検問所があったこともある、ということがうかがえる。
こちらが東成田駅の外観。「日本一短い鉄道」芝山鉄道との共同利用というかたちになっている(芝山鉄道についてはまた別の記事で触れます)。
こちらの出入り口は封鎖されている。これだけのキャパが必要な時代もあったのだなあ、と思うと脳のどこかにジュワッとくる。このジュワッな感覚を求めてぼくは秘境駅巡りをしている。
駅建物の外観。まるで離島のチープな空港っぽさがある。
この建物の中には実は成田空港直轄警備犬の事務所があった。荷物をクンクンして日本の平和を守る犬たちは、ここからあの通路を通って出勤しているのだろうか。ちょっとびっくり。
駅構内に戻り、元の空間が広すぎて封印してある(あまり流行ってない店が使われたくない席を「予約席」扱いにしたり、二階建ての吉野家が深夜は二階が立入禁止になってるのと同じ理論だろう)スペースを覗いてみたら面白かった。
こんな感じで物置になっている。「スカイライナー入口」との表記があるように、こちらはかつて特急が止まっていたホームに繋がっているのだろう。看板に描かれたスカイライナーも旧型の列車だ。
喫茶店の看板や長椅子もある。
「自動化きっぷ入り口」という単語が現代の感覚に馴染まない。自動改札のことだろうか。 そして奥には喫茶店らしきものも見える。これだけの空間が現在は封印されているのだ。
そして、いよいよホームに降りる。
このように閑散とした駅に似つかわしくない広さ。地方の秘境駅などでもこのように「かつて賑わっていたけど今は……」パターンで全然似つかわしくないサイズのホームの長さや駅舎があったりするが、このギャップに萌えるのだ。
こんな感じの駅でも、列車は1時間に2〜3本来る。
センサーで近付くと急にゴワンゴワンと動き出すエスカレーターでびっくりした。そんなの当たり前なんだけど、しかしこの誰も居ない静寂の空間にあると、これもある種のSFチックな雰囲気を感じた。
このシンとした雰囲気はハンガリーで乗った鉄道をなんとなく思い出した。
最近のデジカメは感度もよろしいのでこうやって向こう側の暗いホームも撮れる。
このとおり、こちらのホームは「成田空港」駅のままである。こういうのがタマラナイ!
東成田駅に改称したのは1991年、今の成田空港駅の開業に伴って、「東」扱いになったそう。鹿児島駅より発展した西鹿児島駅が、鹿児島より鹿児島の中心を表現する意味で「鹿児島中央駅」を名乗りだしたのと違って、こちらは名前そのものを明け渡した格好だ。
いかにも90年代初頭くさい感じのデザインな東武鉄道スペーシアの広告。
「これが成田空港駅です!」ってこの写真出したら「え?コラ?」とか「何十年前の写真?」とか言われそうな光景。先週撮ってきたばかりである。
なお芝山鉄道に乗って行って帰ってきたのは別項にする予定。
東成田駅から空港第2ビル駅への帰り道、ひとりで床置きセルフタイマーで記念写真を撮ろうとしたら顔が写らなかった。三脚買おう。
こういうちょっとした身近なレベルの過去の歴史遺構ってとても好きだ。東成田駅、とても良かったです。
余談
成田空港の紆余曲折についてはここでは深くは触れないが、調べると大変興味深い(ぼくはアラサーなのでちょっと世代がズレててよく知らなかったのです)。
成田空港裏面史・禁断の東峰神社へ (2) 団結街道 - 東京DEEP案内
成田空港裏面史・禁断の東峰神社へ (3) 東峰神社境内 - 東京DEEP案内
参考記事: