光景ワレズANNEX

赤いソファを知ってるか 青いソファを知ってるか

なぜなぜ期の幼児の知的好奇心を遮ってしまった酷い親がいるらしい

f:id:akasofa:20180204225258j:plain

 

最近は休みのたびに4歳の息子と銭湯に行っている。
温泉に行ったときに息子は見事に風呂の良さにハマって、帰りの道中で「明日も温泉に行きたい」などと言い出し、そりゃあ叶うなら毎週ぼくだって行きたいわと思いつつも「もっと近場にもお風呂に入れるところはあるよ」と教えてあげ、実際に銭湯に連れて行ってみたらハマってまた行きたいまた行きたいと言うので色々な銭湯に連れ出しているのだ。ぼくも楽しいので丁度良い。

 

0歳の娘は基本的に家におり、それに併せて家に籠もっているとパワーが有り余ってしまう。かといって外で遊ぶのも(特に親が)寒い、児童館や屋内遊びの施設などもいいけど毎週それでもなあ……というのもあり二人で出かけるのに銭湯は非常に都合が良い。行ったことのない銭湯を巡るのは電車、バス、徒歩を駆使したちょっとした街歩きになりぼくの趣味にも合致するし、有り余る子供の体力を削るのにも良い。

 

銭湯は子連れ目線だとまた評価が変わる。ぼく個人が好きなのはやっぱり歴史を感じられる建物で、そういう意味ではボロくてもいい。お湯もグラッグラに熱くても良いくらいだ。最近は交互浴もするので水風呂があればなお最高だ。でも子連れなりの評価軸でのまとめはいずれどこかの寄稿なり記事なりでやりたいと思っているのでここでは省くが、端的に言うとやはり子連れだとスーパー銭湯が最高なのである。高いけど。
特にうちの息子の場合は露天風呂が好きなので、最近は露天風呂を備えた銭湯を優先的に選ぶようにしている。とある日も、460円の標準価格なのに露天風呂がある素晴らしい銭湯に行った。

 

休日の夕方頃の銭湯は、大体どこもそこそこ混んでいる。一番風呂ラッシュを過ぎたあたりでもまあまあの客数、露天風呂にもぼくと息子の他に5、6人ほどいるような状態だった。そこに、背中から太股のあたりまでそのお体にイラストの入った中年男性が入ってこられた。アレレ〜?この銭湯はイラスト入りの方は禁止だよね蘭姉ちゃん……なんてコナン君口調で思いつつも決してヤクのザーさんとかチンのピラ氏とかそう断言するつもりはないので、ここでは親しみを込めて【いらすとやおじさん】とさせていただく。

で、その"いらすとやおじさん"はノッシノッシと「いや別にそっちから何かしてこなけりゃこっちだって、ね…」と野生動物でいうところの象のような態度でサウナに入っていった。イラスト入りの人たちのサウナというとドリフのネタが思い出されるところだ。ふと息子の様子を見てみると、じーっと"いらすとやおじさん"がサウナに消えるまでを目で追っていた。

 

ところで、息子は今「なぜなぜ期」に突入している。ことばも達者になってきて「なんでお父さんはお菓子が好きなの?」「なんでポッペペピピック(ポプテピピックのこと)は2回やるの?」「なんでお父さんはオジサンなんだい?」とか聞いてくるし、息子のクラスメイトの子も「何色の家に住んでるの?」などと聞いてくる。こんなのの相手を年中している保育士の皆様には本当に頭が下がる思いであるし、勝手におもしろツイートにして書籍化漫画化イベント開催しても有り余るくらいにはネタに事欠かないだろう。

で、そんななぜなぜが頭の中でいっぱいの息子がじーっと見つめるその"いらすとやおじさん"、息子は当然背中のイラストが気になっているはずである。大人は大人なので見て見ぬ振りをするし、ぼく個人的には「あ、いるな」くらいでそれ以上気にはならないしイラスト入りの人が公衆浴場に居ても全然問題ないし禁止しなきゃいいのにくらいには思っている。ただきっとイラスト入りの人たちの中には「禁止されているけど入ってきちゃってるんだぜ~ワイルドだろ~」と"あえて禁を破る楽しみ"故に禁止しておいて欲しい人もいるのかもしれないし、その辺はよくわからない。

 

そしてその後風呂を上がって脱衣所で体を拭いていたところ、タイミング悪く先ほどの"いらすとやおじさん"も上がってきたのである。息子はもう一度そのイラストに目が釘付けである。なぜなぜ期の幼児がめちゃめちゃ興味を持つ「背中にイラストが入った人」、当然何らかの問い合わせが発生するリスクはかなり高い。というかまず聞いてくる。別にその人が怖いとかより、単純に本人に「ねえ、なんであの人は体に絵が描いてあるんだい?」とか聞かれてる様子が聞かれたら失礼である。「なんであの人髪の毛が無いの」とか「なんであの人一人で喋ってるの」とか結構普通に幼児は聞くのだ。いやマジで。よくマンガのベタなパターンで、キャラクターが異常行動をしている際に遠くで子供が「ママー、あの人なに?」「シッ、見ちゃいけません」みたいな表現があるが、アレはマンガの型という話ではなく、実は子連れの立場だと結構マジに発生するので注意が必要だ(おそらく子連れのとき体験したことのある親御さんも少なくないはず)。

 

とっさにぼくは息子の髪を拭くように頭からタオルをかぶせてゴシゴシし、息子の視界を奪った。そして「服着る競争する~?下着の前後ろ間違えずに着れるかなぁ」などと全然違う話題を振って気を逸らそうと試みた。息子もまんまと話に乗ってきたが、視界に"いらすとやおじさん"が入るとやっぱりそっちをじーっと見始めるので、今度は立ち位置を入れ替えて"いらすとやおじさん"が息子の背中側に来るようにした。この展開もマンガだなぁ……と思いつつ、まだどうも気になるような素振りだったので「出たらコーヒー牛乳飲む?帰ったらピノ食べる?」などと矢継ぎ早に話題を変えて"いらすとやおじさん"への関心を逸らそうとした。息子も話には乗ってくるが、どうもやはり"いらすとやおじさん"が気になるようで、ちらちらとそっちを見る。ただ"いらすとやおじさん"のほうも周囲に気を遣っている部分はあるようで、かなり素早く服を着終わってくれたので、それ以上息子も"いらすとやおじさん"の方に興味は無くなり、なぜなぜ期の無邪気な質問で失礼をお売りしてしまうような事態は避けられた。

 

家に帰って、今後もうアレについて知っていたら質問もしないかなと思って予習復習をしておくことにした。自宅で息子にGoogle画像検索の結果を見せながら「こういうのは"入れ墨"って言って、好きな人は体に描くんだって。でもすっごく痛いらしいよ」と教えたら、息子は「んー」とだけ答えた。興味ねえのかよ。