光景ワレズANNEX

赤いソファを知ってるか 青いソファを知ってるか

皆様は日常において下半身を日光に当てますか?

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 ある時期、尾てい骨付近、ちょうど尻の割れ目の上部あたりに激痛が走るようになり、日常生活に支障をきたすほどになった。まず柔らかいソファなどには激痛で座れない。逆に硬めの椅子であれば、姿勢次第では痛まない座りかた(例えると屁をする直前のちょっと片尻浮かせた状態のような感じ)も見つけられるが、それならばむしろ立っていたほうが楽という状況だ。姿勢の変更も辛く、寝るときも仰向けには寝られず横向きに、咳をしても痛むし子供の抱っこなどで腰に力を入れるのも厳しいという大変な状態だった。

 

昔にも固いところに尻餅をついて尾てい骨付近を痛めた記憶もある(これで骨折するケースもよく聞く。自分は骨折まで至ってないが)。しかしここ最近でそんな尻の痛むきっかけや原因は特に思いつかなかった。あるとすれば家で仕事をしていたのだがその椅子が硬いやつだったのでその座り方が悪く痛めたというくらいだろうか。

 

年齢からしてギックリ腰をヤるのも大体自分の世代くらいからで、ぼくはギックリ腰未経験者なのでコレがソレなのか…? とも思ったが、痛みの爆心地に意識を集中させてみるも、やはり腰ではない。尻だ。頭の中でHey尻、と問いかけるとマイ尻は「よくわかりません。ところで死ね!」と痛みで応答してくる。痛い痛い。

 

仕事関係の人でもたまに「腰をヤってしまいまして…」と会社を突発で休む人もいる。それは多くの中年も経験をしていることなので、それほど違和感はなく「ああお大事に…」と受け入れられる。だが、「すみません尻が痛いので休みます」というのもちょっと気が引けるというか、腰より下に見られるような風潮があるのではないか(尻だけに)。とは言えそこだけ謎の見栄を張るというか嘘をついてもその後の説明等に苦しむので、尻が痛い事実は事実として説明しておく必要がある。なので嘘をつかず、きちんと尻が痛い旨を上司に報告し、早退して整形外科にかかることにした。

 

家の近所でかつ評判の良さそうな初めての整形外科に行ってみた。いきなり尻見せ(マンガ『ついでにとんちんかん』における定番ギャグ)などは特になく、尻のレントゲンを念のため撮影してもらい、骨には異常がないこと、よって可能性としては尾てい骨付近の筋肉の炎症ではないか、原因は姿勢の悪さや椅子の悪さ、そしてそれを長時間続けたからではないか、などの見解が示された。そして痛み止めと湿布の処方箋が出された。ぼくはレントゲン写真を眺めながら、骨よりもうっすらと写る自分の生殖器官めいたものをじっと観察していた。

 

結局のところそれほど大事でもなく時間が解決する系の症状だとはわかったので、処方箋を持ってこちらも初めての調剤薬局に行った。調剤薬局の担当のお姉さんはコニタン(小西真奈美)をもっと若く素朴にしたような清潔感のある感じで、痛み止めと湿布を広げながら「今回はどうなさったんですか」とこちらに問いかけた。コニタンは基本的に事務的な態度を守る姿勢ではあるもののちょっとした雑談にも応じられますよ、的な硬軟併せ持つような雰囲気の女性に感じた。が別に雑談を振るつもりもなく、むしろぼくのほうこそこの場は事務的に終わらせたい、余計な詮索はされたくないのだが、最近の薬剤師はこちらの具体的な症状を聞きたがってくる。正直に言うと「お前に言う義理はねえからとっとと書いてある薬を出せ」という感情も若干発生してしまうが、これは言ってることと出ている薬のギャップが無いかのダブルチェック的な目的もあるとは勿論わかっている。なので詮索はされたくないがそんなクレーマー的態度は取らず、素直に症状を伝える。ただ今回は尻である。正直言ってコニタンに言うのは少し恥ずかしい。ついつい肩こりとか腰痛とか見栄にもならない見栄を張りたくなるが、素直に「えっと、お尻が痛くてですね」と答えた。
(余談だが腰痛=エロに結びつけるのは童貞なので覚えておいてほしい。腰痛はエロくない)

コニタンはなるほどわかりましたと答え、処方されたものの説明を始めた。「こちらは痛み止め、1日○回まで、○時間は空けて…」と、まあこちらはぼくの心の友ことロキソニンなので聞き流しつつはい、はい、と機械的に相槌する。
問題はもうひとつの湿布についてで、コニタンは
「痛むところに貼ってください。それからこちらを貼ったところは日光に当てないように気をつけてください」
 と説明した。
「え、日光ですか」
「そうです、こちら紫外線に反応するので当てないようにですね」

「"貼ったところ"を」

「はい」

ぼくは最初に「尻が痛い」と説明したハズだ。コニタン、あなたはアレか、目の前の男は尻を日光に晒す生活をしている、とでもお思いなのか? 股間を太陽に晒すライフハックがあると聞いたことはあるが、それと同じことをしていると踏んでいらっしゃる?
真夏の太陽の下、海でブーメランパンツを履いた健康的な青年だったらまあわからなくもないが、梅雨の雨空の下、都心でスーツパンツを履いたザ不健康な中年ですよ。もしそんな人間が尻を太陽に晒す機会がもしあるとするならば、基本的に特殊性癖の系統をを疑って良いと思う。それが良いか否かはともかくだが、陰に隠れて生きるから陰部というのである。

でもコニタンの注意によって、まさに自分が尻を日光に当てている様子を想像してしまい、ちょっと笑いそうになってニヤニヤしてしまった。コニタンは自分の言ったことが何なのかもきっと理解せずこちらのニヤケがただの愛想笑い、あるいは気持ち悪いと思ったのか、控えめな愛想笑いで返してくれた。まあプロとしてどこに貼ろうがその注意すべき事実を注意するという仕事に変わりはないので、その事実を部位にかかわらず説明するというのは正しいのだ。

 

 

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光線過敏症というようだ。気をつけましょう。