光景ワレズANNEX

赤いソファを知ってるか 青いソファを知ってるか

常連客になること

特別なサービスは嬉しい 

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(写真と本文は関係ありません)

 

別名義でこんな↓ブログをずっと続けている。続けていると言っても2012年くらいまでは妻が書いていて、もう飽きたらしいのでそれを引き継いで続けている。

 

nipponnostalgie.hatenablog.com

 

純喫茶や洋食屋、町の個人中華料理屋(さいきんこれも「町中華」なる命名をどなたかがされてそういうジャンルになった)など、単純に行ってみたいと思った店に実際に行ってそれを記事にするというだけの内容である。当然色々な店、しかも結構わざわざ遠いところにも行くので、ここで紹介したお店の殆どに関しては一見さんである。書いたっきり二度と行けていない店も多い。ただ一見さんの客が無価値かというとそうではなく、あくまで常連に支えられているベースがあることを念頭におきつつ、たまに一見さんも迎えてくれると嬉しいし、実際一見さんを無碍に扱ってきたような店は無かった(あったかもしれないが書かないし、多分忘れた)。一見さんのこちらに対してでも、コーヒーに漬け物とかちょっとした無料サービスしてくれる喫茶店、余ってるから…と枝から取った柿をくれる食堂、そんなお店も多かった。そんなちょっとのサービスが本当に嬉しく思う。ただ、これだけ色々な店に行っている以上すべての店の常連になることは現実には不可能である。常連的な貢献は無理だから、せめて誰か他の人の目に触れて、その人が訪れてみたいと思ってくれるようなかたちで役に立てば…と思い記事にする。そんな感じなので、実際にこのお店は常連です、と言える店は殆ど無いのであった。

 

 

常連になりたいのか

では自分が常連となる店はどこにあるのか。

週に数回も訪れる店は実はチェーン店ばかりである。平日の昼食と夕食は基本的に外で済ませるのだが、そのどちらも個人店に行くことは今の自分には時間的に難しくやむを得ないのが半分、もう半分は単純に、先ほど書いたことの全否定に見えるかも知れないが、個人店の常連客になりたくないというのがある。

たとえば、個人店の店主に顔を覚えられたとしよう。そうすると大抵言われるのは「しばらくぶりでしたね」とか「今日は一人?」とかいうことになるのは必至だろう。あるいは「いつもの」で出てくるメニュー、そういう気遣いが嬉しくもあり、逆に自分にとって負担にもなるかもしれない、そんな風に感じてしまうのだ。気付かないで欲しい、特別扱いしないで欲しい、ほっといて欲しい、のっぺらぼうの客としてコーヒーを出してお金を取って追い出して欲しい、そんな風に思ったりしなくもないのだ。非常にめんどくさい男である。

 

チェーン店でも常連扱いをする 

しかしチェーン店でも、特に店員さんが入れ替わらず店長や社員の人の場合だと、気を遣ってさりげない常連客扱いをしてくれることも多々ある。あるチェーン店カフェの場合は、いつもぼくがコーヒーのLサイズを注文するのがわかっているので、ぼくがレジに並んだ時点で抽出に時間のかかるコーヒーマシンをセットして抽出を始めてしまう。こうなると急にぼくがオレンジジュースを注文しようものならそのコーヒーLサイズはムダになってしまう。スピーディに提供されてとても嬉しいのだが、一方でこの店でコーヒーLサイズ以外を飲む権利はもう無くなってしまったのだった。

 

別のチェーン店カフェの場合、メニューレパートリーが少ないこともあってぼくの注文内容はほぼ固定化していた。そこで店員さんはレジの先行入力をしてあとは電子マネー支払いのボタンを押すだけで待ち構える。レジにもよるが電子マネー決済の起動に数秒待つ場合があるので、その時間をなるべく少なくしてくれているのだ。これもお気遣いいただいた結果である。が、しかしこの店でもぼくはこの固定メニュー以外を注文できなくなってしまった。

 

あるコンビニの特定時間にいるパートの店員さんもぼくの顔を覚えて、いつもコンビニコーヒーのLサイズを頼むので何も言わずにLのカップをレジ通ししてくれる。でもたまには急いでいてコーヒーを飲む時間すら無いこともあり、また下痢をしているときはレギュラーサイズでもいいかな、なんて思ったりもするのだが、これもまたLサイズを飲むしかないのだ。

 

このように、客が「いつもの」を頼む背景には実は「頼まざるを得なくなっている」可能性も少しあるのだと気付いて欲しい。とはいえ厚意でやってくれていること、いちいち否定したり、本当に要らないときはそう伝えるだけだし、結局9割は自由意志でその「いつもの」を頼むのですが……(文句を言っているわけではない。念のため)。

そしてこうなってくると、ぼくの場合大抵しばらくその店とは距離を置くようにする。新たな出会い、新たなほっとかれ、あるいはその仕事のデキる店員さんが異動するのを待つ間として、別のチェーン店を模索するのである。

 

 

かつて常連になったお店への再訪

先日、その常連化してしまったチェーン店に1年ぶりくらいに訪れる機会があった。1年前のいつもの時間にいつものスーツを着た一人客が入店する。レジは1年前と同じ、あのコーヒー抽出を先行入力でやってくれていた人だった。多分、向こうも顔は覚えているはずだ。なぜなら注文さばきもレジも機敏、更にそうした個別の対応も可能、要するに優秀そうな人だからだ。昔から別に雑談をしたことは一度も無い。今回も「1年前のいつも」のように(幸いその品物はまだグランドメニューに残っていた)同じものを注文し、コーヒーもLサイズを頼んだ。店員さんは、きちんと注文を聞いてレジを通してからコーヒーの抽出を始めた。これが単に常連フラグがリセットされたからなのか、先行入力が暗に注文を強制している可能性があることに気付いたからなのかはわからない。なぜなら雑談をする関係性ではないからだ。ぼくは1年前より数十秒余計に待たされた後、コーヒーLサイズを受け取った。少し寂しかった。