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赤いソファを知ってるか 青いソファを知ってるか

【実録】隣人に怯えてやむなく引っ越しをした話

今住んでいる部屋に引っ越してそれなりに経ったので、直近の引っ越しについてその経緯をまとめようと思う。集合住宅での隣人トラブルに悩まされて予定外の引っ越しを余儀なくされたわけだが、皆様の今後の借りぐらし生活において少しでも参考になればという思いである。

 

※なお自分と登場人物の諸事情を勘案して念のため幾つかの情報にはフェイクを混ぜておくので、矛盾とか発見しても気にしないように。ネタだったらもっと話を盛るからね。

 

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前の家の近所にいたネコ(貼る写真が無いので)

 

 

導入

その物件だが、バブルの頃の建物でSRC(鉄筋鉄骨コンクリート)造ということもあり非常に堅牢であったと思う。東日本大震災でもフィギュアのひとつも倒れなかった。Twitterで「ゆれた!」ツイートが沢山湧いても揺れを感じないことがあるくらいだ。ゴキブリはたまに出るし全体として古さは感じるが、家賃や立地とのバランスを考えると結構気に入っており、特段の理由がなければしばらくは更新し続け住む気でいた。

 

トラブルの原因(と言っていいのかわからないが、一旦そう表現する)となった音漏れだが、自分が住んでいて周囲の部屋からの音から感じる主観としては、

 

・話し声→まず聞こえない

・足音やドアの開け閉め等の生活音→ほぼ聞こえない

・水やトイレ、風呂の音→たまに聞こえる

・上階の人が床に固いモノを落としたり、トンカチを打つ音→聞こえる

・外の道路の音や話し声→結構聞こえる

 

といった感じだ。響く音は聞こえるのと窓が薄いの以外は、家賃の割には優秀では、と感じた。元々最初に住んだ木造アパートが、紙のような壁の薄さで参って毎回SEX中には誤魔化すためのBGMを流していたくらいなので、音漏れの条件の良さそうな物件は毎回意識して選んでいたのであった。

更に、基本的に賃貸物件は上下左右の4方向の隣人を意識しなければならないが、角部屋だったので気にするのが3方向(逆隣と上下)で済むというのも良かった。

 

 

問題の隣人 

問題の隣人はうちの階下の住人なのだが、当方がこの物件に住んで何度かの契約更新をした後に引っ越してきた。このくらいの賃貸物件だと人によって挨拶をしたりしなかったりなので、挨拶にわざわざ来る人もいれば来ない人もいる。階下の人は後者だったがそれは何ら気にならなかった。たとえばうちが後から引っ越して来たら多分挨拶に行ったと思うが、昔からいるうちが挨拶に出向くのも変なので、顔を合わせたら「子供が生まれた後はうるさくするかもしれないから、気をつけますがもし気になるようだったら言ってください」と言っておこう、くらいに捉えていた。

 

話が前後するが、このときは妻が里帰りし出産準備中で、ぼくはこの部屋に一人暮らし中であった。子供が無事生まれ、何ヶ月かしたら戻ってくるわけだが、子供なんぞすぐピョンピョンしたりガンガンしたりするとこのときは思っていたのであった。

 

(実際は、歩けるようになるまで早くても1歳、ハイハイでも最低生後6ヶ月以上はかかるわけで、要するに赤ちゃんとは泣き声以外でうるさくする能力を会得するのにそれくらいはかかる生き物なのである)

 

そうして無事に子供が生まれ、3ヶ月になろうとする頃に妻と子供が東京に帰ってきたのであった。

ここから、いよいよ隣人との接触と精神戦が始まる。

 

 

ファーストコンタクト

ある日帰宅すると、育休を取って家で育児中の妻から報告があった。曰く「下の階の人から苦情があった」旨を管理会社経由で聞いた、と。

先に述べたとおり、これまで階下に住んでいた人から苦情を受けた経験は無かったこと、自分の階上の住人の生活音は自分としては全然許容範囲、通常のレベルであったこと、子供もこの月齢でハデに動き回れるわけではないしとてもじゃないが騒音源とはならないことから、多分一日中いる妻のガサツな生活音が過ぎるのではないかと仮定し、ダイニングチェアの引き方や、歩き方(カカトからガツガツ歩かないなど)を気をつけてはどうか、と伝えた。

 

ところが翌月また妻から報告があり、今度は階下の住人本人から直接苦情があったという(その後毎月同じくらいのタイミングで苦情を受け続けた)。苦情自体は平日日中に来るのでぼくが対応はできなかったのだが、数ヶ月後のとある平日、ぼくがたまたま休みを取っている日に来た。そのときたまたま(なのか、今思えば狙ったのか不明だが)ぼくだけが買い物に出た数十分間の留守番の間に苦情に来た、と妻が言っているので、これは直接会って話をするしかないと思い、すぐに階下に向かった。

 

対応にでたのは苦情主、階下の女性だった。階下の部屋は夫婦で住んでいるようで、子供はいない。そして女性は専業主婦か家の中でできる仕事かで一日中家にいるということであった。うちの妻も育休中なので一日中家におり生活時間が丸かぶりなのでそれで気になる部分が増幅しているのであろうか、とも思ったが、この人と色々話をして、ぼくの危機察知能力からするとそういう問題以前の話な上に、ヘタを打つとヤバい人間だという感覚を得たので、ここからは慎重に対応していこうと決意したのだった。

 

階下の女性が言う当方への苦情内容としては、要約すると以下のとおりである。

 

・尋常ではない音で、こちらを階上から攻撃している(床を蹴ったり、わざと騒音を発生させたりしている)と認識している。

 

・(うちの妻に)苦情を入れた直後も(階上から彼女への逆ギレ的に)床を蹴っている様子で、恐怖を感じた。

 

・エアコンやキッチンのあたりから文句のような声が聞こえることがある。

 

・(階下の女性が)ゲームを起動する度にあなた方は床を蹴っているのでは? 起動に連動して蹴ってきているからきっとゲームの音も聞こえているのでは?

 

・眠れなくなり病院に行っている。生活に支障がでている。

 

・たまらず、天井(=うちの床)を棒で突いて反撃をさせていただいている。

 

・弁護士への相談も考えており、記録をつけている。

 

それに対して、こちらの意見をなるべく優しく、やんわりと、彼女の話を否定することのないように伝えた。

 

・物件の音の漏れ方はどの部屋も同じ建物なので一律大体同じだと思うが、構造的にそちらの部屋に漏れやすい可能性が否定できない雰囲気もあるので(方便)、録音や音の発生日時等を記録いただいたほうがこちらも具体的に「何の音が原因なのか」の対策を打ちやすいので、よろしければ引き続き記録はお願いしたい。

 

・もしよろしければ、うちの部屋に入って、そちらのご夫婦や管理会社立会いの中で、音の出る実験などをなさっても構わない。どの部屋もお見せするし、何を落としたりしたらこういう音がこの辺で鳴る、みたいな確認をして貰って構わない。むしろこちらも改善の対策を立てやすいので、是非やってはどうか。

 

・また、そちらの生活音やゲーム音が聞こえるのかどうかも確認してもらっても構わない。少なくとも私たちは一切聞こえていない認識であり、気にしたこともない。

 

・攻撃する意図は一切無いし誤解である。それは信じてほしい。妻もそういう攻撃的なことができる性格ではないのは夫として保証したい。

 

・棒で突っついてるという事実も今初めて知った。突っつかれているという感覚も認識もなかった。

 

・子供はまだ音を出せるほど動けないが、今後も気をつけていきたい。

 

・近々に打てる対策については順次打つ。具体的には、椅子の脚には防音フェルトを貼ったり、床全体にクッションパネルを敷くなどをする。

 

・生活音のレベルは、我々も生活をしているので許容いただきたい。

 

こういった話に対して、階下の女性は一応納得した様子で、それならば今回は……と引き下がった。ただ実験の話に関してはやたら消極的だった。多分、うちに対して恐怖を抱いていたのだと思う(だから夫婦揃ってとか管理会社立会いとかを提案したのだが)。

 

そして約束したとおり、ちゃんと床にはクッションパネルみたいなやつを敷き詰めた。リビングダイニングの床全面に敷いたら結構なお値段になってしまった。 

 

 

待ち伏せ

その翌月くらいだったか、ある休日、妻が買い物に出たと思ったらすぐに怯えた顔をして戻ってきたから何かと聞いたら、階下の住人が共用階段のところで待ち伏せをしていたというではないか。共用階段は部屋の廊下から曲がったところにあったので、突然の遭遇に妻のビビりようは想像に難くないし、ぼくだってそんなことされたら怖い。その階段はそもそも階下の住人は通常来る用事のないところだし、人が滞留したりする場所でもない。偶然会ったのではなく、間違いなく待ち伏せされていたのだった。

 

更に聞くと、妻がそのときビビりながらも階下の女性に近づいて話をしようとすると

「近付かないで!何その隠した手は!刃物でも持ってるのか!」

などと言ったという。隠した手というのは、抱っこ紐に入った子供に回した手のことである。そんなとこに刃物が入るわけないだろ。

 

……というわけで、これはいよいよヤバい。どちらかというと刃物を恐れているのはこっちだよと言いたい。いやそんなこと言ったらもっとヤバいことになるのでヤバい。

 

早速アフターケアとしてぼくがすぐに乗り込み、階下の女性と会話をした。会話の内容は大体先の話と同じであるが、「その後騒音や攻撃音と認識した際の記録はつけていますか?」と確認したところ、一旦記録はやめているが今度ビデオカメラ買いますとのことだった。どこからどう撮るのかわからないがこれではおちおちSEXもできやしないではないか。

また、数日間こちらが旅行で不在にしていたことも階下の住人はしっかりチェックしていたらしく、「いない期間は静かで大変良かった」のようなことを言っていた。勘弁してくれよ……。 

 

管理会社に相談

この件でいよいよ本格的にヤバいと感じたので管理会社にも本腰で相談した。日中、妻子を家に置いて仕事に行っている身としては、むしろ自分が狙われるより恐怖を感じる。

管理会社の担当と電話をしたところ、ぼくの危機察知能力を裏付けるかのような話がポロポロ出てきた。そして実際に管理会社に出向いて担当者と話をした。その概要は以下のとおりである。

 

・その住人は、別件でもちょくちょく管理会社に苦情をしている。具体的には外の道路の音、共用廊下や階段の音、郵便受けが開けられてるのでは、などなど……。

 

・その住人は別の住人からは逆に苦情を受けている側である。曰く、夫婦喧嘩の声がめちゃめちゃ激しいとか(うちには聞こえてきたことは無く、認識したこともない)。

 

・この物件自体は、過去に音の問題で苦情を受けたことは殆ど無い。

 

・ぶっちゃけ、(階下の住人は)めんどくさいので出て行ってほしい。


要するにヤバい人間だという認識を管理会社も持っていた。これは朗報というか、大分色々と手を打ちやすくなった。何かの話し合いや検証の際の立ち会い協力等をすることや、ここからは管理会社と裏で手を結び、「(うちに)苦情を突きつけてあげてるから安心してください」とか「引っ越しを考えてるらしいから今暫くの辛抱だ」などと管理会社から階下の住人にわざと言ってもらって牽制したりして直接苦情の発生を防いだ。

 

 

 

解決に向けて

このようにこの物件の管理会社の対応は非常に素晴らしく、できることなら住み続けたいと思ったくらいだが、今回のトラブルはどちらかが離れないと決着しないとぼくは考えていた。管理会社の人が「正直言って(階下の住人には)出て行ってほしいので、お詫び金みたいのを出して引っ越しを検討されては、と言ってみることも考えてます」と言うので、ここで「じゃあそのお金をぼくにください、そうすればぼくが引っ越しますので……」と手を挙げた。

 

繰り返すが、残念ながら今回のようなトラブルはどちらかが離れないと決着しない。たとえばうちが引っ越して、後から入った人が同じくらいの騒音を出したとしても「うち(赤祖父家)じゃない」という理由で妙に我慢できたり納得したりするものなのである。「うち(赤祖父家)がいる」という時点で既にこの件は詰んでいる。気に入ってる物件といえども、流石に妻子の生命の危機を飲んでまで住む理由などないので、ここから本気の物件探しを始めた。

 

 

引っ越した

数ヶ月にわたって物件を探し、結局、元の物件と同じくらいの広さだけど値段も高く、立地的にも少々劣る物件で手を打った。ただ今回の物件にした理由は「隣人を選ぶ」意味合いが大きい。

トラブった物件は同棲カップル、子供なし夫婦、子供あり夫婦入り乱れる混沌とした住人達だった(それだけ割安でお得なのだ)のだが、今度の物件は殆どが子供がいるファミリー層で、少なくとも挨拶した上下左右すべて子供がいる家庭だった。子供の大きさはまちまちだが、それなりの理解が得られることは期待できる。どうしても賃貸で隣人を選ぶのは不可能だが、隣人の質を選ぶことはある程度のお金を出せば不可能ではない(まあアレのアレな病などに関してはどんな人間でもそうなるリスクはあるが……)。

 

管理会社からはいくばくかの迷惑料(そんなに多額じゃないですよ念のため)、更に敷金の問答無用の全額返金というかたちで便宜を図ってもらった。それでも引っ越しに伴う出費を埋めるには全然ほど遠いものだが、これでようやく安心して暮らすことができると思うと感慨深かった。「安心して暮らす」というのは日本では忘れがちだけど、健康で文化的な生活の要件としては重要である。

 

その後、階下の住人も健康になったのかどうかはわからないが、管理会社の人とは結構仲良くなったのでそのうち機会があれば聞いてみようとは思っている。

 

なお反撃というほどではないが、引っ越し日の翌日、掃除をしにガランとした部屋に戻ったときに、一人で掃除をしながら床を本気で蹴ったり柔道の受け身をしたりMCハマーのダンスのマネをしたりした。これまでの生活音とマジの床蹴りとの比較をしてもらえたら幸いであったが、この日階下の住人は苦情には現れなかった。 

 

※参考(1:56あたりのやつです)

youtu.be

 

 

教訓

まず、アレな人は変に刺激するのはゼッタイNGである。いくら治安の良い日本といえど、人は刃物でえぐられたら、死ぬ。イキナリのエッジの効いたホーチョー・アクションはもう防ぎようがないので、兆候を捉えたらそれを加速させないよう努め、また関係を悪化させないようにする。今回も、とにかく相手の話を否定しない、謝る、改善の努力を見せるといったスタイルを徹底した。ダメですよ間違っても「聞こえないものまで聞こえてるだけじゃねえかキチガイ!」なんて言っちゃ。

 

それと独りよがりにならないよう、第三者(ここでは管理会社)の協力を仰ぐのも重要だ。管理会社が頼りなかったら他の住人に相談して音の響きの検証をし、数の圧力で攻めようとも思っていたくらいなので、そんなに大事にはならずよかったと思う。

あと、いざとなったらためらわずに引っ越せるくらいの貯金はしておいたほうが良いと思う。それが賃貸のメリットでもあるのだし。

 

 

余談

ちなみに前々回の引っ越しの際には、管理会社との敷金トラブルが発生し、少額訴訟をしてお金を取り返すという面倒くさい体験をした。

その詳細はfc2に作った昔のブログに書いた。

(ただしただの記録なのでそれ以上の価値は無い。あくまで事例としてご参照ください)

akasofa.blog130.fc2.com